建築と街とをつなぎ、地域性、人間中心に都市を考える、そんな町並みづくりに成功したのが代官山にあるヒルサイドテラスではないだろうか。ヒルサイドテラスは、1967年から1992年の25年間かけて建設された、複合建築(住居・店舗・オフィスが併設)である。朝倉家は不動産業を行うにあたって、代官山という場所が、自然豊かな快適な場所として保たれることを望んだという。商業至上主義な時代背景にあっても、一貫して思想は変わることなく、朝倉家と建築家槙文彦氏、そして多彩なクリエーター達の協力によって進められてきた。そして代官山にヒルサイドテラスというひとつの風景をつくりあげた。ヒルサイドテラスを歩いて感じるのは、外に対して開かれていることである。建物の間のパブリックスペース(ペデストリアンデッキなど)は、境界をゆるやかに繋いでいる。広々と感じさせる街路空間のあり方など、参考にするべき点が多くある。ヒルサイドらしさとは、一言でいうならばヒューマンスケールでつくられているということだろう。 |
エスポワールは綱島という地域性を大切にし、ヒルサイドのようにヒューマンスケールでまちと生活のデザイン化をめざしている。今回のエスポワールL・Vは、2棟からなる集合住宅でありながら独立した建物である。2棟をつなぐ中庭的なスペースにメタセコイヤを植えた。風にそよぐメタセコイヤ、光が映し出される白い壁…。そんな仕掛けが施された空間は”光と風のシンフォニー(交響曲)”そんな言葉がぴったりな空間となった。光と風が奏でる音、そんな心地いい音楽が今にも聞こえてきそうである。またメタセコイヤの効果は大きく、独立したLとVを街のなかにきちんと収めてくれる。道行く人はこの木を見て安らぐ。人と街とがゆるやかにつながっている。建築を介して、個人⇔街をヒューマンスケールでつなぎ、そして街と生活をデザイン化する。いいデザインとは人を幸せな気分にさせる。ヒルサイドテラスのように、綱島で”ひとつの風景”をつくっていければと考えている。 |