コンセプト

2つの心地よさをつくろう

U. ゆるやかに繋がる余白の心地よさ

 引き出し(出るところ)でもあり、ポケット(隠れる部分)でもある余白部分をつくった。そこは、”地と図”との関係、”ルビンの壺”ごとく、いつも揺れ動いてる。ただ空を眺めたくなる、ただ座りたくなる、ただただ…といった世界。その曖昧さが、人の無意識の中へそっと入って、心理的結界をつくると考えた。
 そうしてつくられた心理的結界は、人と人、空間と空間、人と都市、すべての物の間に成立する。それは、全ての物を、ゆるやかにつなげる余白なのである。その余白は、縁側のような心地よさを作っている。その余白は、サティの音楽のような心地よさをつくっている。”2つの心地よさ”はお互いの関係性によって、自由に形を変えていく。

T. サティの目指した音楽のような心地よさ

 建物をかたまりに見せず、いろんな方向へ向かうように、外壁、内壁ともに色で面を塗り分けた。塗り分けられた壁は、面に分解され、そしてその建築の構成をいろいろ想像できるようにした。
 様々な方向へ向かう面は重力を感じさせず、ただただ漂う感じになる。そして、人は無意識の世界へ入っていく。エリック・サティは、家具のような音楽を目指したと言っている。それは、家具のようにさりげなく、BGM的という意味と捉えられている。サティは、無意識の魅力を十分に理解し、表面的な感情ではなく、もっと奥深い無意識の世界への音楽を目指したのだろうと思った。建築にもサティの目指す音楽のような部分があれば、それが建築のもつ魅力になると思った。

前へ 次へ