建物の中間部分、2階に上がる階段、その両側を彩る鮮やかなピンクと白の空間。時折見せる空の青とピンクと白のコントラストが、太陽の光がピンクを鮮明にし、空間の質を変えます。メキシコの建築家であり都市計画家でもあるルイス・バラガンの建築で取り入れられている手法を取り入れ、シクラメンから色をイメージ。
ルイス・バラガンは水面や光を大胆に取り入れた、明るい色の壁面が特徴的な庭園を多く設計したことで知られています。自邸兼アトリエは、世界遺産として認定されており、バラガンのスタイルの原型となったものです。
バラガンは、南部スペインのムーア人の構造、地中海の国内の構造、フェルディナンド・バックやフレデリック・キースラー、ル・コルビュシエの理論などの影響を受けながら、彼自身のデザイン手法を形成していきました。
ルイス・バラガンの建築の基本は、白を基調とする簡素で幾何学的なモダニズム建築でありますが、メキシコ独自の、民家によく見られるピンク・黄色・紫・赤などのカラフルな色彩で壁を一面に塗るなどの要素を取り入れ、国際主義的なモダニズムと地方主義との調和をとりいれています。特にピンクは、メキシコ人にとって大変馴染みの深い色で、それはメキシコの町のいたるところでみられるブーゲンビリアの花の色でもあります。
バラガンは壁を「もうひとつの風景」として、メキシコの風土を「色」に置き換えて壁に託していたのです。見る者に強烈な印象を与えるピンクを使いながら、下品な印象を与えないのは、抽象化された風景として空間を構成しているからかもしれません。また、庭園や屋内に水を張った空間を取り入れたり、建物に溶岩やメキシコ独特の植物からなる庭園を造ったことも特徴の一つです。
*参考資料 TOTO出版「CASA BARRAGAN カーサ・バラガン」齋藤裕著
「マカロン」の鮮やかなピンクと白の色は、オーナーの育てているシクラメンの色に置き換えた一つの風景なのです。