志野焼の種類
2017年05月18日志野焼は桃山時代に美濃で焼かれた長石釉(のちに志野釉とも呼ばれる)を掛けた白い焼物の名称です。長石釉という白みの帯びた一種の透明釉と美濃の白い土が合わさることでつくりあげられる白い焼物で、日本の焼物で初めて下絵付ができるようになりました。
釉薬の掛かり方によって、白い釉面に表れる緋色とピンホールと呼ばれる小さな穴は異なりを見せ、白と緋色の対比は志野の焼物の最大の魅力です。
志野焼は、16世紀の桃山時代に志野焼は誕生しました。それまでの日本では、中国から渡来してくる白磁という焼物の白さに日本人は憧れ続けいましたが、白磁の白さに勝るとも劣らない白い焼物をつくることは叶わないでいました。
しかし志野が生まれ白という色を本当の意味で実現すると、さらに鉄絵と言われる下絵付けも実現させたことで、日本の焼物の歴史に新たな軌跡を刻みました。
【 志野焼の種類 】
釉薬に長石釉を使う、それが志野としての最低条件であり、これにどのような技術が加えられるかで様々な種類の志野が生まれることになります。
・無地志野
*「志野と織部 All of Shino & Oribe」より抜粋
鉄絵が無く白一色となる「無地志野」の魅力は、完璧な白さを持たないところにあります。白い焼物として有名な志野としては逆説的な魅力ですが、茶器としての無地志野は白磁のような均質性を持たないところが魅力的だとされています。
志野の肌は、ピンボールが現われ、時に緋色と言われるほのかな赤みを帯び、釉薬の掛かり方もムラがあります。器ごとに釉薬の流れの変化があり、その不均一から生まれる美しさに魅力を感じるのは日本的とも言えるでしょう。
・絵志野
*「志野と織部 All of Shino & Oribe」より抜粋
下絵付、釉薬の下に酸化鉄で模様を描き、その上から長石釉を掛けるという装飾技法によって志野は鉄絵によって飾られた「絵志野」となります。無地志野が白磁写しとするなら、長石釉に鉄絵で模様をつける絵志野は、染付の写しの焼と呼べるものでした。
染付に較べて肌は不均一で、白さや装飾の鮮やかさも劣り、欠点に見えるところも絵志野ではむしろ美点と呼べる魅力です。
・練込志野
*「志野と織部 All of Shino & Oribe」より抜粋
志野の種類の中には絵志野から派生したものは多く、直接素地に表現するという点で他の志野と一線を画すのが「練込志野」です。
志野の長石釉は白い釉ですが、大きな分類でいえば透明釉となります。透明であることで、絵志野の絵が現われ、透明であることで二種類の素地の色が模様となって現れる「練込」という技法が生まれました。
志野本来の白い土と、これに鉄分の含んだ土を混ぜて轆轤でひきあげることによって、二つの土の色の変化が味となる焼物が出来上がります。
・鼠志野
*「志野と織部 All of Shino & Oribe」より抜粋
「鼠志野」の鼠色は、粘土と鬼板を混ぜた化粧土を使い、その上に長石釉をかけることで鼠色に仕上がります。全体を鬼板の泥漿で塗り、模様部分を掻き落とすと、鼠地に浮かび上がる白い文様は絵志野以上に鮮明に表現されています。
・紅志野
*「志野と織部 All of Shino & Oribe」より抜粋
「紅志野」は鬼板の代わりに酸化第二鉄を含む黄色または赤色の粘土と、鬼板よりも鉄分の少ない黄土の化粧土を使います。その上から、鉄絵文様を描き、長石釉を掛けることで緋色と白のコントラストに仕上がります。
絵志野を反転させて作られた鼠志野などはその祖形とはまた違った表現方法を持つこととなった志野焼です。
織部同様、志野焼と呼ばれるものの分類は他にもあり、ひとことで「志野焼」「織部焼」といっても、器ひとつひとつが見せてくれる表情はまったく違います。
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